少し前に発売された本ですが、やっと読了しました
「徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに・・・」・・タイトルが長いですね
ちきリノベ50(チキリノベフィフティ)でいきましょう!
ちきりんさんが自宅をリノベーション(以下リノベ)された際に気づいたことを「いつもの鋭い視点」でまとめた本ですが、大事なのはリノベよりもっと深い部分だなーと感じました
一言でいうと「快の追求」の大切さです
一見するとリノベの指南本で徹底的にユーザー目線で書かれているため、リノベを考えている人にはとんでもなくタメになります
リノベで最初にぶつかりそうな壁である業者選び、それぞれの業者の違いや選ぶ際の基準、考え方を詳しく説明してくれています
リノベを計画していなくても
「もしリノベをするならどこをどうしたいか?」
「それはリノベをしないと実現できないのか?」
など、住まいについて考えるキッカケをもらえるんですね
でもリノベって手段であり目的ではありません(アタリマエだけど)
本当の目的は「理想の暮らし」を手に入れることです
そして理想の暮らしについて徹底的に考えることは、自分が「どう生きたいのか?」を考えることになるんです
本書を読めばわかりますが、リノベ後はかなり尖った間取りになっています
それを実現するには、自身の生活や理想を明確にイメージする必要があります
また、今後起こりそうなことを予測して、その際の方針も決めておかないとこんな「攻めた間取り」なんて実現できません
例えば
・親の介護は自宅でするのか?
・自身の足が不自由になった場合は?
なんてのですね
こういうことを具体的に考えることで各箇所を一つ一つ決定していくのですが、多くの人は「もし同じようにスケルトンリノベ」するとしても、おそらくこれほど細部に渡って考え抜くことができません
なぜか?
理由はいくつかあると思うのですが
・これからをリアルにイメージする力が弱い
・現状対する分析が甘い
・固定観念にとらわれて自由な発想ができない
・あれこれ考えるのがメンドクサイ
こんなところでしょうか
例えば本書のリノベでは洗面所の下に空間があり、車椅子のままでも利用しやすい作りになっています(もちろん室内は全てバリアフリー)
これは「もし自分が車椅子生活になったら?」をリアルに想像できているからです
すごく大事な視点なのですが、実際に自身が車椅子に乗る機会があったり、足の弱った祖父母や親を目の当たりにしないと、なかなか想像しづらいです
「車椅子生活」というと廊下を「車椅子が通れる幅」に設定しがちですが、実際はその横を介護者が通れるだけの余裕がないと、介護しづらくて仕方ありません
そんなことも実際に車椅子を押した経験がないと、なかなか気づけないんですよね
また、固定概念も想像の邪魔をします
ぼくがリノベするなら「3LDKを2LDKにする?」程度しか思いつかないもんですが、それは現状の住まいの枠内でしか想像できていないからです
本書の間取りははそういった概念が全く通用しないほど、とんでもない。
理想を突き詰めていけばそういう「尖った間取り」に誰もがなるはずなんですよね、ホントは。
そしてそれが自身の生活の快適度を最大にしてくれるんです
例えば、多くのマンションは日当たりのいい場所がリビングでその窓の外がベランダになっていますが、最も日当たりのいい場所が別に寝室でもいいんですよね
そうすれば布団を干す際の「寝室→廊下→リビング→ベランダ」という動線が「寝室→ベランダ」だけになり、作業が圧倒的に楽になります
起きた目の前がベランダなら干す作業を億劫に感じることも少なそうですし、寝室が南向きならカーテンを開ければサンルームになり、湿気の解消やベッドでの日向ぼっこなど、いいことはたくさんありそうです
寝室を最も快適にしたい!
というのが理想ならこういった間取りがいいかもしれません
※夏が暑そう、というのは二重窓の断熱でかなり解決できるようです、詳しくは本書を。
もっと細かい部分でいうと、例えばトイレの水栓レバー
どちら側についているか強く意識することもないパーツですが、本来ならおしりを拭くのに使う手の反対側にあるほうが、レバーが汚染されません
もっと言うならレバーの代わりに足で踏むタイプでもいいはずなんです
(センサーもありますがいろいろとメンドクサそうな印象です)
例えば室内のドア
どちら側に開くほうが使いやすいのか、よほど不便を感じてなければ普段あまり考えませんよね
でも出発時より帰宅時のほうが荷物を持っていることが多いはずなので、部屋に入る方向にドアが開くほうが便利かもしれません(押すだけで済むから)
例えば電灯のスイッチ
普通は壁の胸の高さぐらいについていたり、リモコンがあったりしますが、「電気!」の声でオンオフするほうが便利に決まってます
これも「手が位置を覚えている」ことで「暗闇でスイッチを探す」という不便さを感じにくくなっているだけです
実現可能かどうかは別にして、固定概念にとらわれずに考えるのがすごく大事です
でもそんなことを細部に渡って考え抜くのは、ものすごくエネルギーの要ることです
だから大半の人は「こだわる部分」以外は業者が提案してくれたままに受け入れてしまい、またそれに合わせて暮らすようになります
そして後になってから「ここ、もうちょっとこうしてたらよかったね」なんてなりがちなんです
それが「後から修正が効く」部分ならいいけど、スケルトンにしないと改善できない場合は後悔が残りますよね
それを防ぐにはやはり現状の不便さとこれからの暮らしを、具体的に、徹底的に、考えるしかありません
そしてそれは自身の「快、不快」を突き詰めて考える、という作業なんです
自分は何を快適に感じて何を不快に感じるのか?
洗濯するのは嫌いじゃないけど干すのが大嫌い、干すのはいいけど畳むのがメンドクサイ、そもそも洗濯自体やりたくない・・
それぞれにストレスを感じるレベルがあるはずです
それらを突き詰めて考えていくことが、リノベを通して理想の住まいという「快適さ」を手に入れることになります
人によってはそこまで考えること自体がストレスに感じることもあるでしょう
それなら「こだわる部分」以外は業者に任せるのが「快を手に入れる」ための、その人にとっての最適な方法ということになります
また予算の問題もありますので、全てを理想通りにするのも実際は難しいでしょう
これはお金があるないだけでなく「理想の暮らしを手に入れるためにかける金額」に対する自分にとっての妥当性の問題です
自分の気持ちを誤魔化すことなく「納得できる金額」で「納得できるもの」を手に入れるのも大事だと思うんです
これは住まいだけでなく人生のあらゆるシーンで「何かを選択する」度に突きつけられる、大切な問いです
そこにエネルギーを割かないと、妥協した人生になってしまいます
考えることをメンドクサがってる「フリ」をして逃げてしまいがちな人は、いま興味のある分野でいいから一度真剣に考えてみるといいんじゃないかな
そのキッカケになる良書だと思いますよ
ではでは