音楽とか、考え事とか

日々考えたことを書いています。

羽根田治氏著「ドキュメント 道迷い遭難」は人生の損切りが苦手な人に読んでほしい

まだ読み始めたばかりの本ですが、とんでもない衝撃に襲われています

 

※内容のネタバレがありますのでお気をつけください

 

僕は登山をしないのですが、先日ヤフートピックでこの本を取り上げているのを見かけて「人生の教訓になるかも」と思い購入しました

軽い気持ちで通勤時間に読み始めたのですがとんでもない、教訓なんて甘いもんじゃなく読んでいるうちに脂汗が出てくるほどの恐怖に襲われました

 

まだ読み始めで収録されている7件のドキュメントの1つ目を読んだだけなのですが、あまりに衝撃が大きくブログに書かずにはいられませんでした

 

タイトルの通り「道に迷うことで起こる山での遭難の実録」なのですが、その本質は「失敗を受け入れたくない弱さ」や「やり直しを面倒くさがる」ことで現実から目を背け、自分に都合のいい「希望的観測」から惰性で行動し、ドンドンと窮地に追いこまれていく様子がリアルに綴られています

 

本書にありますが、本来なら道を間違ったと気づいた時点で来た道を引き返せば、正しい道に戻れる可能性が高いはずです

なのに(1章の)主人公の50代男性は「雨の中で地図を出すのが億劫」「メガネが曇っててどうせ読めないだろうし」などという小学生のような言い訳をしながら「このまま下るほうが早く下山できるはず」と自身に都合のいいように思いこみドンドン沢へと下っていきます

 

その道中で状況が刻々と悪化していく様子が物凄くリアルに伝わってきて、読みながら恐怖で汗が止まらなくったんです

 

登山では道迷い時に「沢に下る」のはご法度なんだそうですが、当人は「自分は冷静に判断している」と思い込むことで不安から目を背けているので、そのまま歩を進めていきます

そして沢に降りると必ず遭遇する、これまたご法度の「滝を下る」過程で手に怪我をしてしまい、それによって来た道を引き返せなくなり、ついには無謀にも「高さ」も「下の様子」も全くわからない滝壺にダイブします

 

もし滝の高さが数十メートルあれば即死ですし、数メートルだったとしても滝壺の深さが数十センチなら底に叩きつけられ、ただでは済みません

どう考えても自殺行為なのにもう他に選択肢がないところまで追いこまれ、冷静な判断が出来なくなってしまっているんですね

 

もちろんダイブの結果はタダでは済みませんでした

 

漠然と抱いていた「とりあえず下に向かえば下山できるはず」という甘い願望が、現実には全く通用しない「自殺行為」であることを身をもって体験していくんです

 

その容赦のない自然の厳しさが本当に怖い

自然の中では人間なんて本当にちっぽけな存在なんですね

 

手を怪我し、足を折り歩けなくなり、食料がなくなって、脱出を試みるもののあっけなく失敗し、その際に脱出のために必要な装備や荷物をすべて川に流してしまいます

もう絶望です、まるで「これから死んでいく人」のドキュメントを読んでいるような「迫りくる死の恐怖」を感じます

 

まあインタビュー記事なので当人は助かっているんですけど、それはたまたま奇跡が起きた幸運であり、そうならなかった多くの方々がこうやって命を落としていったんでしょう

 

その事実がものすごく怖い

 

日常生活でも、失敗を認めず何とか取り返そうとしたり、引き返すことが億劫で無謀な行動に出てしまうことは多々あります

 

僕も後から考えると「無謀だったなー」と思える経験がいくつもあります

 

読んでいるとそういった自分の「過去の甘えた行動」を断罪されている気持ちになり、「あの時もそうだった」「何も起きなかったのは運が良かっただけだ」と自身の未熟さを目の前に突きつけられている気持になるんです

 

これが精神的にけっこうキます

自分の甘さと向き合うのはキツいんですよね

 

それでも「過去の反省」のためや、今後の人生の「選択時における判断の合理性」を意識したいのなら、たいへんな良書だと思います

(まだ1章しか読んでないけど)

 

読んでいて感じる「遭難の最大の原因」はそれまでかけた労力に対して「損切り」をしなかったことだと思うんです

 

そのまま下ることで直面するかもしれない「未知のリスク」より、来た道を戻るという「計算できる労力の消費」のほうがどう考えても安全で合理的です

損をした時間や体力をその時点で「損切り」して、それ以上の大きな損を出さないようにするべきなんです

 

でもそれがなかなかできないんですねー

 

損切りというのは投資用語で「更なる損失を防ぐためにその時点での損失を確定する」行為のことです

買った株がとたんに下落して、あっという間に10万円の損失を出したとします

本来なら「価格変動を読み違えた」と判断してさっさと決済し、10万円の損を確定させたうえで次の戦略を練るべきです

ですが損を取り返したい気持ちが強いため「すぐまた値上がりし損失もなくなるかも」などという都合のいい願望でそのまま放置し、翌朝起きると損失が50万円に拡大している・・、なんてことをやってしまいがちなんです

 

みんな頭ではわかっているのに、いざその場面になると感情が邪魔をして合理的な判断を下せなくなります

損切り」というのは想像以上に難しい行為なんです

 

これって仕事や商売でも全く同じこと言えると思います

 

明らかに過労死ラインを超えるような働き方をしているのに「自分で選んだ仕事だから」「辛いのは自分だけじゃない」などと思いこむことで「考えること」を放棄し、ムリを続けた結果、心や身体を壊してしまう事例が多く発生しています

 

商売でも、明らかに売上が落ちてきているのに「自分はきちんとした仕事をしている」「良さがわかればお客さんは来るはず」などと思いこむことで、策を練る努力を怠り「小さなプライド」を守りながらそのまま閉店に追いこまれる・・

 

本質はどれも同じだと思うんです

 

間違った道を進みながら正しい道に修正するのは並大抵のことではありません

間違いに気づいた時点でとっとと分岐点まで戻るべきなんです

 

自分の生命や生活を守るためには「損切り」は必ず身につけるべきスキルだと思います

道に迷っても周りの人に聞かず自分でなんとかしようとするような人は、ぜひ一度読んでみてください

 

 何か気づくことがあるかもしれませんよ

 

 ではでは