前回レビュった本「ドキュメント 道迷い遭難」ですが
現在は4つ目の事例を読んでいるところです
4例目は当事者が初の女性なので、また違った感じなのかな?
(本書には7例のドキュメントが収録されています)
上記のレビューでは最初の1例目を読んだ時点で「とにかく怖い」と何度も書きましたが、2例目はさらに壮絶でした
「損切り」がどうこうではなく、窮地に陥り大事なものを徐々に失っていく恐怖がリアルに綴られています
被害を最小限で食い止めるには一刻も早く下山するしかないのに、思うように進めない焦り、ドンドン進行する症状に対する恐怖、為す術なく状況が悪化していく無力感で、読んでて息が詰まりそうになります
朝から読むには相当にヘビーな内容でした
重い内容ですのでレビューはこのへんで、気になる方は読んでみてください
さて3例目ですが、これまた教訓が満載の事例でした
「来た道を戻るのを面倒くさがって」というのはもう「道迷い遭難」の定番なのですが、今回はそれだけでなく「パニックになった人間の行動パターン」がよくわかります
今回の事例も間違った道を進み、沢を下り断崖絶壁に当たってしまうのですが、当人は体力をひどく消耗しているためここまで下ってきた沢を登って戻るには体力や気力が残っていません
かといって断崖を降りるのも難しそうなので、沢の左右側面にそびえる30mほどの急斜面を登り、向こう側に出ようと試みます
滑落しないように慎重に登っていくのですが、なぜかあと10mという地点で後戻りして降り始めてしまいます
「登りきってもその向こうに希望があると思えなかった」とインタビューでは答えていらっしゃいますが、なら最初から登るべきじゃありませんよね
おそらく「登りきったその向こうが現状と変わらない状況だったら・・・」と怖くなり、絶望が「確定」することから逃げてしまったんです
そしてその降りる途中で滑落してしまい、全身を激しく打ちつけてしまいます
幸い動けなくなるほどではなかったためその後も活動するのですが、急斜面をあきらめ降りてきた沢を登り始めるも、なぜかまた途中で引き返して断崖の地点まで戻ってみたりと、まったく合理性のない動きをしドンドン体力を消耗していきます
もう完全にパニックになっており、自分が何をしているのかわからなくなっているんですね
冷たい言い方になりますが、これでよく助かったもんです
まあそれがわからないから「パニック」なんですが、それでも「オレはいったい何をやっているんだろう・・」という考えぐらいは頭を過るはずです
この「オレは何をやっているんだ」という考えが浮かんだら、もう泥沼にはまり込んでるサインです
正常な判断力が機能していないので、それ以上あがいても何も解決しません
ならどうするか?
こういう時は自分のアタマで考えるのをやめて「他人のアタマ」で考えてみるのがいいんだそうです
これはずっと以前に本で読んだ言葉なので引用になるのですが「尊敬する人の頭脳を借りる」という考え方です
※本の名前は忘れてしまいました、すみません
「こんなとき尊敬する○○さんならどうするんだろう」と想像することで、現状を客観的に捉えることができ、失っていた「正常な判断力」を取り戻すことができるんですね
日常生活なら「煮詰まっている」と感じた時点でいったん手を止めて、ソファにゆったり座りコーヒーでも飲んで気分転換をするのがいいはずです
でも登山のようにそんなことできない状況なら強引にアタマを切り替えるしかありません
その切り替えるべきタイミングが「オレは何をやっているんだ」なんです
さらにそうやって擬似的でも「誰かの意見を聞く」スタンスになると、弱い自分を(尊敬する人の視点で)叱責することも出来るようになります
それがさらに自身を奮い立たせてくれるんですね
大事なのは現状を客観的に分析して最善の選択をすることです
それによって自身にキツイ作業を強いることになっても「それが最善なら仕方ない」と開き直ることが重要なんです
誰でもラクをしたいし、できるだけ近道をして早く帰りたい
でもそう考えている事自体が、主観的になり視野が狭くなっていると自覚するべきです
自分で自分を鼓舞し、肉体的なキツさも含めて合理的に判断できる人間なら、そもそもこんなパニックはすぐに脱するはずです
それができないなら自分だけの力では打開が難しいので、誰かの力を借りましょう
擬似的な対話は思考を深めるのに有効な方法だと思います
ではでは