音楽とか、考え事とか

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日々考えたことを書いています。

「熊本地震4.16 あの日僕たちは -LINEでつないだ避難所運営の記録-」の感想

 

すべての人が読むべき本だと感じました

 

 

理由は簡単で「いつ誰が被災し、避難者になるかわからない」からです

 

この本では臨時で開設した避難所が大学だったので、そこに通う学生たちが「学内をよく知る自分たちが立ち上がるべき」という使命感で、ボランティア活動の中心になりました

 

でも他の場所だったら身体が元気に動く人々が自然発生的に活動を始めるでしょう

 

その際にこの本に書かれているような「起こりうる問題」を知っているのといないのとでは、その動きに大きな差が出てくるはずです

 

また当然、あまり活動に参加しない(できない)人も出てくるはずですが、その人達もこういった知識があるのとないのとでは、協力姿勢が大きく違ってくるはず

 

そのへんは「リーダーシップ」を題材にしてこちらのブログに詳しく書かれています

 

chikirin.hatenablog.com

 

「災害ボランティアじゃないじゃん!」と思うかもしれませんが、本質は同じです

活動する側の苦労を想像できるかどうか?はそれぞれの行動、発言、気遣いに大きく関わってくるんです

 

もちろん読んだからといって、それだけでイザというときスムーズに動けるわけではありません

でもいつ被災者になるかわからないこの国では、こういった避難所のリアルを全員が知識として共有しておくべきだと思います

 

 

またこの本は「専門家の視点から分析」したような本ではなく、現場でボランティアにあたった学生たちの LINE のやり取りをそのまま掲載しています

(個人情報などの修正はあります)

 

ほぼ原文ママで掲載していることにより「現場の臨場感」がすごく伝わってきて、実際にどんな問題が起きていたのかをリアルに感じることができます

 

・二転三転する情報に混乱する現場

・善意の学生ボランティアに対して不満を露わにするオトナ

・頑張りすぎて疲弊していく学生たち

 

学内に入ってくる車の交通整理なんて、ドライバーからすると風景のように軽視しがちで、ともすれば「もっとスムーズに整理できないのか?」なんて思ってしまいがちです

 

でも彼らはあくまで善意のボランティアであり、ひょっとすると交代がうまくいかず数時間ぶっ通しで、立ちっぱなしの交通整理をしているかもしれないんです

 

そんなときに窓を開けて「ありがとう、助かるよ」なんて一言があると、やってる方もきっと救われるはず

 

そういった気遣いがスゴク大事だと思うんです

でないと立ち上がってくれた若者たちが腐ってしまいます

 

今回は熊本県立大学が舞台なのですが、実はここは熊本市が指定する避難所ではなかったため、食料の備蓄も毛布も設備も整っていません

ただ広い敷地があり、鉄筋コンクリートの頑丈そうな建物がある、そんな理由で多くの人が逃げ込んできただけ・・

そんな中で始まった手探りの避難所運営の記録なんです

 

でもこういったことって、どこでも起こり得ますよね

 

指定された避難所まで行くことが困難な場合「とりあえず自宅より安全!」と思われる場所に誰もが逃げ込むはずです

そこが広い敷地を有する施設なら多くの人が同じ行動をし、自然発生的に避難所と化してしまうと思います

 

そしてその後移動しようとしても、その指定された避難所がいっぱいで入れなかったら、更に遠い指定避難所まで向かうでしょうか?

そこもまた満員かもしれないのに・・

 

そうはせずに、現状の場所に留まる人が出てきてもおかしくないと思うんです

 

そうした自然発生的に避難所と化した大学で、これまた自然発生的に小さな学生ボランティアグループがアチコチで生まれたそうです

 

ボランティア学生たちはそれぞれ小さなLINEグループを作り、アレコレ活動しているうちに次第に統合されていき、学生ボランティア本部を設置して全てを統合する流れになっていくのですが、

そんな中でのやり取りでも「配給」「トイレ」「誘導」の3つのグループのログを、この本では取り上げています

 

「食べること」「排泄すること」「場内整理」の3つですね

短期的な避難所の運営ではこの3つが最も重要ということなんでしょう

 

※長期的な避難所なら他にいくつも重要なことがあると思います

 

それぞれの学生たちが必死に活動し、問題に直面して迷い、自分たちで判断して現場対応する中で、情報が錯綜し、疲れ、現場が混乱していく様子が刻々と綴られています

 

タイムロスがなく瞬時にやり取りできる LINE は災害時にとても役に立つ反面、明確なルールを決めて運用しないと、あっという間に混乱して使えなくなるだろうことがリアルに伝わってきます

 

・スタンプは使わない

・既読で確認できるので「了解」などの返事はしない

・全員で共有すべきことはノート機能を使う

 

こういったルールは普段からLINEに慣れ親しんでいないと、イザという時になかなか活用しきれません

そういう意味ではボランティアの中心が「LINEを使いこなしている学生」であったことは、大きなアドバンテージがあったのかもしれません

 

「最近の若者は・・」なんてテンプレの苦言がありますが、ぼくは「最近の若者はやる時はやるな!」と誇らしい気持ちになりました

 

繰り返しになりますが、すべての人が読んで知識として知っておくべき本だと思います

 

 

最後になりましたが、混乱する現場で自分たちも避難者なのに自主的に立ち上がった学生ボランティアの皆さん、またそれを支えた大人の方々、本当にお疲れ様でした

 

ではでは