音楽とか、考え事とか

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日々考えたことを書いています。

日本語を進化させているバンド、サカナクション

サカナクションが2016年9月にリリースした「新宝島

この歌詞がすごく個性的で面白い!


サカナクション / 新宝島

 

「丁寧」を連呼するパートがあるのですが

 

このまま君を連れて行くと

丁寧に描くと

揺れたり震えたりした線で

丁寧に描くと決めていたよ

 

「丁寧に描くと」の部分を「てぃ~ねぃ~てぃ~ね、てぃ~ね~~いに~~えが~くと~」といった感じ歌っています

 

この歌い方にあまりにもインパクトがあり、当時これをパロディネタとして使用する人が続出しました

 

ラジオDJが曲紹介のときにパロッたり、他のバンドがMCで笑いをとるのに真似したり、日常会話でネタとして使っていた人も多かったのでは?

「その荷物、てぃ~ねぃ~てぃ~ね、てぃ~ね~~いに運んでな!」なんて僕もよく使っていました

 

連呼して強調するだけでなく言葉をそのままクリアに発音しないという、発明といってもよさそうな歌い方で一度聴いたら強く印象に残ります

 

その意図をちょっと考えてみました。

 

結論:日本語にこだわって追求した結果の進化

 

サカナクションは日本語を大事にしていきたい」とボーカルの山口一郎さんは初期のころから語っていらっしゃいます

 

音楽と文学を愛する一郎さんらしいですね。

 

サカナクションの曲にはタイトルが英語表記の曲がチラホラありますが、歌詞には英語詞がまったく出てきません

出てきてもカタカナ表記で「日本人の使う外来語」として歌ってます(ライト、イメージ、アイデンティティなど)

J-POPでよくありがちな「サビだけ英語詞」みたいなのが全くないんですね

 

日本語を愛するという言葉の裏には「英語が話せない自分は英語詞では歌わない」という気持ちがあるんだと思います

そして日本語を駆使して歌詞を創り続けた結果、上記のような今までになかった歌い方をあみ出したんじゃないかな

 

強調したい部分を繰り返すだけでなく英語でいうところの「音の消失」や「音の連結」のように「話しことばにおける音の変化」を日本語の歌詞に取り入れている

 

最新曲の「多分、風。」にもそれは表れていて連呼による強調こそありませんが音の変化は顕著に見て取れます

 


サカナクション / 多分、風。

風、走らせたあの子にやや熱い視線

焦らせたその仕草に

風、走らせたあの子にやや熱い視線

焦らせたこの季節に

連れていかれたら

 

の「やや熱い視線」の歌い方が「ややぁっつ~い~せん」になってます

「連れていかれたら」も「つれってっかれったら~」といった感じ

 

もう歌詞カードを見ないと聞き取れなくなってきていますね

「How about you?」が「ハバゥチュゥ?」になってるようなもんです

 

・日本語だって英語みたいにつなげて発音してもいいよね

・そもそも文語体と口語体ってのが昔からあるんだしさ

 

という気持ちの表れなんじゃないでしょうか

 

「せうゆ」と書いて「しょうゆ」と呼んでいた時代から、省略したり崩したり外来語に置き換えたりすることで変化してきた日本語

それを歌詞という分野でまた一歩違う方向に進めた形ですね

「僕たちは日本語で戦っていくんだ」という強い意志を感じます

 

日本語にこだわり続けた結果の進化、クリエイティブな人の考えることってホントすごい

 

言葉をつなげるのって会話では(特に関西弁では)当たり前のようにやっていますが、歌詞の中で明確な意思をもって表現するのは今までなかった気がします

(リズムに合わせるための省略は今までもあったかも)

 

これからもっともっと進化するとどうなるのかな?

日常会話では使わないような漢字なんかも出てくるのかな?

漢字って英単語と一緒で意味が深いですもんね

 

サカナクションの今後がますます楽しみです

 

そういった意味で今もっとも楽しみにしているのが、現在パネラーを募集しているこちらの企画

 

「サカナクションのNFパンチ」×「MUSICA」コラボ企画の3つ目の議題です

 「議題3:日本人が英語詞で歌うの、どう思う?」

 

・日本人なら日本語で歌え

・英語で歌ったほうがかっこいい

 

などの表面的な議論だけでなく

 

・英語で歌うことの効果

スペイン語など他の言語じゃダメなのか

 

のようにもっと突っ込んだ展開を期待します

 

ではでは