音楽とか、考え事とか

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日々考えたことを書いています。

靖国神社に参拝して思った「遊就館」の偏り具合について!

 

去年(2014年)の話ですが、かの有名な靖国神社に行ってきました

一度行ってみたかったんですよね、ここ

 

関西に住んでいるとなかなか行く機会もなく、でも毎年夏になると嫌ってぐらいテレビで聞く名前なので「実際どうなのかな~」と以前から興味津々だったんです

 

結論から言うと神社自体はフツーです

お賽銭を入れて、二礼二拍一礼して、フツーに参拝してきました

平日だったってこともあり人もまばらで、特にこれといった特別な雰囲気もありません

 

んでも、その敷地内にある「遊就館」という施設がこの神社の真髄なんですね

中に入ってみるとそのことがハッキリとわかります

(「遊就館」って変換一発で出てきたのもビックリです)

 

遊就館に入館したらまずドーンとゼロ戦が展示してあり、いきなり「おー!すげーー!」って感じ。

実物大のゼロ戦はやっぱり迫力があります

 

その後ろに大砲が展示しており、横のエリアにはおみやげ屋さんがあったりするんですが、フリーエリアなので自由に見ることが出来、単なる展示で思想的な匂いはありません

 

戦争歴史の展示物って感じ。

 

でもこれは施設のごく限られた一部で神髄はその奥の「大人800円」で入場できる有料エリアなんです

ここがすごい、これがヤスクニか~って感じ。

 

では入館料を支払ってエスカレーターで2階に上がり、順番に展示を見ていきましょう

 

意外だったのは、まず最初に刀とか鎧の展示があり武士の時代から始まるんです

てっきり近代日本史だけと思い込んでいたので、ちょっとビックリしました

 

そうやって順番に見ていくと黒船が来て明治維新があって西南戦争があってと、歴史の授業のように淡々と展示は進んでいきます

このあたりは思想的な感じはなく歴史の展示物を年表にそって見ている感じです

 

その流れで靖国神社がどういう思いで作られたかという展示があり

 

「長く続いた内戦で命を落とされた方々の霊を弔う」

 

のが目的で建立された神社なんだとか。

そうなんですね、全く知りませんでした

 

んで、このあとから近大日本史へ入っていくんですけど、このあたりからちょっと毛色が変わってきます

日清戦争日露戦争第一次世界大戦満州事変って感じで続いていきますが、まず展示の量がかなり増えてそれぞれをかなり細かく説明しています

 

また、内容が詳細なだけでなく

 

「敵国の身勝手な振る舞いに耐えかね戦争に踏み切った!」

「勝利を収めて日本の領土を拡大!!世界の列強に対して存在感をアピール!!!」

 

っていう思いがビシビシ伝わってくる展示なんです

 

「しゃあないから戦争したったら勝ったけど?」

「日本ナメんなよ、コラ!」

 

ってところでしょうか。

 

液晶モニタで動画を流してたりもするんですけど軍艦マーチをバックに

 

「日本は得意の機動力を駆使して強豪バルチック艦隊を撃破!!パパパパーーン!!!」

 

といったまくし立てるような映像で、かなり引きます

まるで、北のあの国が作りそうな動画です。

 

ショートムービーを見る部屋もあったんですけどそれぞれ結構時間が長く、残念ながら見る時間がありませんでした

展示の量が多すぎて時間がなくなってきちゃったんです、2時間確保してたのに全然足りませんでした

 

それから支那事変(日中戦争)を経て1階に降り、太平洋戦争(第2次世界大戦)へと続いていきます

そう、1階のスペースはすべて太平洋戦争の展示なんです

有料のエリアは1階も2階も同じ面積で、2階は幕末~支那事変まで、1階は太平洋戦争のみってことになります

どんだけ詳しく展示しているのかがわかりますね。

 

その展示も

 

「欧米諸国に資源の供給をストップされて仕方なく戦争に踏み切った」

 

みたいな匂いがプンプンしています

ありましたね?ABCD包囲網とかです、欧米先輩のヤキ入れです。

 

「極東のちっこい島国が調子のってんじゃねえぞ!」

「ナメてんのか!!お前調子に乗りすぎなんじゃ!!!」

 

つて感じのやつ。

 

太平洋戦争はあの有名な「真珠湾攻撃」から始まって最初は快進撃が続きます

そのあたりは日本を褒め称えて、自慢にすら思えるような書き方の展示が続きます

 

「国土の小さな日本でも世界の列強諸国と充分に渡り合える」

 

 そんなメッセージをビンビン感じます

 

ですがご存知のように戦況は次第に悪化していきます

 

それには

 

「思いつきのような無謀な作戦計画」

「人命軽視の根性論」

「保身に走り現場の声を握りつぶす幹部」

 

とかとか・・

 

今も脈々と受け継がれる日本のジメッとした部分が大きく影響しているんですが、

その辺りの「原因」については全く触れておらず「しかし戦況の悪化に伴い・・」みたいにサラッと書いているだけです(ま、当たり前か)

 

そしていよいよ打つ手がなくなってきた時に、そうです、特攻隊です

これも完全に美談にされており「身を挺して一矢報いようと」みたいに表現されています

いつの時代も若者を犠牲にするのは変わらないんですね

「非正規雇用で不安定な生活を余儀なくされている」程度なら幸せに感じるぐらいです

 

「もう打つ手ないからお前ら敵艦にぶつかって死んでこい」ですよ?

 人生これからって時にどれだけ絶望したことでしょう

 

普通の出撃でも生きて帰ってこれない可能性はありますが、特攻は100%死亡します

出撃の前夜はどんな気持ちで過ごしたのか、考えるだけで胸が痛くなります

その方々が家族にあてた手紙も展示されてるんですが、もう食い入るように見てしまいました

もちろん書いてあるのは上官に検閲された文章ですので「死にたくない」なんて一言も書いてありません

「御国のために礎になる」なんてことがつらつらと書かれてあり、残すことになる妻へ身の振り方を指示したり、子供たちへの最後の言葉、両親への感謝で溢れています
しかも皆さんすごくしっかりした字で書いており、必死に運命を受け入れ覚悟を決めていたことが伝わってきます

 

無念や未練が伝わらないように・・

潔く散っていったと思ってもらえるように・・

 

必死に気を配っているのが文章や文字から伝わってくるんです

 

10~20代の若者が大半ですよ?

震える夜を思うと涙なしでは読めません

そのエリアからしばらくは壁中に戦死された方々のお名前と顔写真が貼られています
ここにきて初めて共感できたのは「誰一人特別扱いしていない」ということで、写真の大きさも同じで並べ方も階級ごとではなくランダムな感じです


ここまで日本軍を正当化していた流れとは明らかに違うな、と思いました
もしかしたら自戒の意味を含ませているのでしょうか?

(誰が戦犯か?をわかりづらくしているとは思いたくない・・)

 

そして最後の部屋は桜花や回天などの人間ミサイルの実物模型の展示です

桜花は空の人間ミサイル、回天は海の人間魚雷のことで、爆弾を人間が操縦して敵艦に突っ込んで敵を沈めるというものです

 

そりゃこんなものフリーエリアには展示できないですね

思考停止人間が思いついた人命軽視の塊みたいなシロモノです

最後に展示しているのは自戒の意味を込めているんでしょうか?

・・そうであって欲しいところです

 

最後まで見て感じるのは全体を通して匂わせている「仕方なかった感」です

「仕方なく参戦した」
「仕方なく犠牲を払った」
「仕方なく降伏した」

この「仕方ない感」がすごく怖いと思いました

 

「いやいや、仕方なくはなかったでしょ?」とわかるようになるまでは見に行かない方がいい施設だなー、と強く感じました

とりあえず近代日本史の本を何冊か読んで、あの頃なにが起きていたのかをある程度理解した上で見るべきです

そのうえで、日本人なら一度は見ておくべき施設じゃないかな、とも思いました

 

僕は近代日本史にけっこう興味があるので本なども読んで予備知識があり、ここで見たものをそのままを受け取ったりしませんが、何も知らない真っ白な若者が見たらカンタンに右寄りになりそうです

 

そういう意味では有料にしているのはいいことですね。


今年の夏も、これからもずっと、亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします

 

ではでは